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天秤の測定データはSDカードに保存してExcelで処理しよう

2024年9月12日木曜日

自作プログラム 電気製品・電子機器

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業務上、天秤を使うことがありますが、サンプルが大量にある場合、いちいちメモをとるのは時間かかるしミスの恐れもあります。

プリンタをオプションで揃えておけば、印字することもできますね。でも、高いです。メトラー・トレド社製だと下位機種で6万円、上位機種で9万円くらいします。たかだかドットプリンタに。。。

まあ、これはGMP対応など必要であれば仕方ないオプションかもしれません。印字したのをラボノートに貼る場合もあるし。でも結局キーボードでExcelに入力しなおす場合も多く、やはり時間がかかりミスの懸念があります。

自分はあまりお金をかけずに環境改善したいタイプなので、、、というかお金が無いので、、、純正品よりもサードパーティー製品をうまく活用していきたいと思っています。

天秤データを大量に処理する場面って?

自分の場合、多いと数十くらい処理することがあります。目的ですが、不純物なんかを明らかにするために成分を細かく分けた時、その量を量っておくのに使うことがあります。

また検量線なんかを引くときにも多数の測定値を一度に処理する必要がありますね。自分はこれが大キライです。。

場合によっては、試薬の残量管理だったり、在庫管理だったりするかもしれませんね、そうすると数百以上のデータ処理が必要になるかもしれません、いやはや、恐ろしいですね。


純正品のみでデータをExcelまで持っていくには?

もちろんこういう場面に対応できるように、各天秤メーカーは純正オプションを用意しています。

メジャーどころのMETTLER TOLEDO(メトラー・トレド)とA & D(エー・アンド・デイ)については概ね下記のような感じです。

METTLER TOLEDO社製品の場合

PCとケーブルを使って直接データをやり取りすることができます。データはRS-232Cケーブルという一昔前の規格のケーブルでやりとりします。未だに測定機器では使用されているゾンビみたいな規格ですね。

RS-232Cは現在市販されている多くのパソコンに装備されていないので、接続には拡張ボードか、USB変換アダプタ(後述)を利用します。

しかしメトラー・トレドの場合、少し厄介な点があります。それは通信用の有償のソフトウェアLabX directが必要なことです。見積もりをとったことはありませんが、9万円以上すると思われます。つまり、PCとソフトを用意する必要があり、もう一台天秤が買えるくらいのコストがかかってしまいます。うーん。。。

2024年8月26日追記:その後EasyDirect Balance というソフトに変わったようです!

もちろんLabX directには多くの機能があり使用する人もいるのかもしれません、特に医薬系などのラボでは。でも多くの研究室では不要な機能です。

A & D社製品の場合

PCと直結する場合

こちらもPCとケーブルを使って直接やり取りが可能です。ケーブルはRS-232Cを使う場合もありますし、天秤のグレードによってはUSBで繋ぐこともできます。

USB接続の場合は片側通信となりデータを読み込むだけしかできませんが、RS-232Cの場合は双方向通信が可能で、PCから天秤を操作することができます。PCにRS-232Cがついていないことが多いため、拡張ボードかUSB変換アダプタ(後述)が必要です。

A&D社の良いところは、通信用のソフトウェアが無償でダウンロードできるところですね。

純正データロガーに一旦保存した後にPCに取り込む場合

純正のデータロガーとして軽量データロガーAD-1688というのが販売されているようです。価格は大体2万円くらい。天秤とはRS-232Cで接続し、PCとはUSBで接続します。最大データ数は5,000で、天秤のPRINTキーを押すと日付や時間とともに秤量値が記録されるとのことです。


このAD-1688の良い点は、インターバルモードでも使用できることです。つまり1秒とか1分とか1時間とか、一定間隔で秤量データを自動保存することができます。

非純正品でデータをExcelに持っていくには?

上記を調べていて感じたことですが、A&D社は測定データのPCへの取り込みや、あるいはインターバル測定など多様な測定方法に対して、様々なオプションを安価に提供してくれている印象です。

一方でメトラー・トレドは何かとお金がかかり、オプションは少ない印象です。(私の調べ方が足りないのかな?)

しかしながら・・・これは日本人として悔しい所もありますが、天秤自体の性能はメトラー・トレドの製品の方が、高く評価されている現状があり、多くのラボでメトラー・トレド製品ばかりを見ます。

私自身、大学も入れると3ヶ所以上のラボを見ていますが、いずれもメトラー・トレド製品ばかりでしたし、私自身もメトラー・トレド製品を購入したことがあります。。安定するまでの時間が短くて済むんですよね。。

ということで、今、この記事をご覧頂いている方々も、メトラー・トレド品を使用している方も多いのでは無いでしょうか?ということは、測定データの取扱いに不満を感じている方も多いのでは?と思います。

繰り返しになりますが、メトラー・トレドの場合、ソフトの購入に9万円、PCも用意して数万円。。さらにPCを天秤の近くに置いておくのは正直邪魔ですよね。。一々起動するのも面倒だし。。

ではどうしましょうか…?私は非純正品の利用をオススメします。

天秤はいわゆる汎用品で、どのラボにもあるものなので、それを有効に活用するための機器もある程度の需要があります。そんな訳で、天秤メーカー以外の複数の企業から、天秤に接続できる機器が販売されています。

特にデータのExcelへの取り込みに着目した製品を2点ご紹介します。

B-LOG(販売:アズワン)

かなり小型で、天秤データのSDカードへの取り込みに特化した製品です。天秤のプリントキーを押した時にその値がSDカードに記録されます。

データロガー B-LOG-01(後継機はB-LOGNです、後述します)

  • 本体価格:約2万円(2017年時点)
  • 接続:RS-232C(別売り、天秤の仕様によりピン数が異なるものが用意されている)
  • 電源:ACアダプター
  • 記録:SDカード(※SDHC、SDXCは非対応!)
  • 通信:一方向(天秤 → B-LOG)
  • 対応メーカー:メトラー・トレド、A&D、島津、ザルトリウス等(外部接続可能な機種であること等、確認が必要)

すでにプリンタを持っている人は、B-LOGと同時に接続したいと考えると思います。でもプリンタとB-LOGの同時接続は、マニュアルには書いていません。もちろんQ&Aサイトにも方法は書いていません。

多分、そこまで面倒見きれねーって感じなのかもしれませんね。

ちなみに私の環境では同時接続はうまくいっています。方法ですが、ベストかどうかは分かりませんが、RS232Cの分岐ケーブルを使用します。

メトラー・トレドの製品と接続するとします。9ピンですね。固定用のネジの種類はインチネネジとミリネジがあって、ちょっとわからないので、ケース・バイ・ケースかも。そもそもネジなんか止めなくても大丈夫。。多分。。分岐ケーブルについては、詳しくは以下の店舗で聞いてみるのがよいかもしれません。。

GPSプロショップ RS−232C分岐ケーブル

結線のタイプは両側全結線タイプや片側のみ全結線タイプがあるので注意!私は片側のみ全結線タイプを購入し、少なくとも私自身は動作確認しています(もちろん責任はとれませんが・・)。そんなに安くもないので、お間違えの無いよう・・。

ちなみに全結線側をプリンタに、もう一方をB-LOGに接続して、問題なく同時動作させています。プリントキーを押すと、印字されると同時にB-LOGがピッと鳴ってデータが記録されます。

この時の主な設定ですが、

<天秤側>通信速度:9600bps、データ長:8ビット、パリティ:無し、ストップビット:1、ハンドシェイク:ハードウエア、デリミタ(CR)+(LF)

<B-LOG側>ディップスイッチ1:ON(9600bps)、ディップスイッチ3:オフ(ヘッダーカットしない)

って感じです。これで同時接続できてますが、もっと良い設定もあるかもしれませんね。ちゃんと調べてないので、すみません。。

このB-LOGのデメリットといえば、やはり未だにSDカードにしか対応してないところでしょうか。SDカードって売ってるのか?って感じですが、実はAmazonとか見ると売っていますね。古いデジカメとかで需要あるんでしょうね。

B-LOGの他のデメリットといえば、双方向通信できないことでしょうか、後述のSDロガー3の方が値段は高いですが双方向通信が可能で、いろいろなことができます。まあこういうのは値段次第なのでしょうがないですね。うちでは十分活躍してくれています。

後継機あり

B-LOG-01は販売終了となり、SDHCカードも使えるB-LOGNという後継機種が発売されました(次の画像つきリンク)。基本的な仕様はB-LOG-01とそれほど変わらないようですが、対応・非対応機種に少々違いがある模様なので注意!


SDロガー5(製造・販売:データテクノ)

※以前はSDロガー3について書いていましたが、2021年8月17日時点で、いつのまにか5になっていましたので更新しておきます、スクリプトの書き方などは大きな違いは無いと思います。念の為メーカーにお問い合わせいただければより安心かと思います。

大きさとしてはB-LOGよりも1回りくらい大きいですね。幅10cm、奥行きも10cm。同じく天秤のデータをSDカードに保存できますが、B-LOGよりも高価な分、色々と高機能ですね。バージョンアップも頻繁かも??

データ・テクノ SDロガー5 ケースタイプ DT-SDL5 (スクリプト版)

  • 本体価格:約3.8万円(2021年8月時点)
  • 接続:RS-232C(別売り、天秤の仕様によりピン数が異なるものが用意されている)
  • 電源:ACアダプター
  • 記録:SD/SDHCカードに対応(※SDXCは非対応!)
  • 通信:双方向(天秤 ← → SDロガー3)
  • 対応メーカー:メトラー・トレド、A&D、島津、ザルトリウス等(外部接続可能な機種であること等、確認が必要)

という感じ。

B-LOGと比べて特に優れている点として、双方向通信による天秤の制御が可能であることが挙げられます。

つまり、B-LOGと同じように測定データをSDカードに記録するだけでなく、SDロガーから天秤に信号を送って、定期的に測定値を送信させたり、ある時刻になったらゼロ点補正したりということが可能な訳です。

特に、インターバル測定機能の無い天秤にインターバル測定させたい場合は、通常はPCを直結して制御するしかないのですが、SDロガーを使うとこれ一台で済みますので、非常に便利です。

実際にSDロガーで天秤を制御する方法ですが、下記の通りとなります(SDロガー3の場合です!)。メトラー・トレド社品を例に説明します。メトラー・トレド品の場合、MT-SICSという独自コマンドで制御されまして、例えば”S”というコマンドを天秤が受信すると、現在の秤量値を返す、といった感じ。

  1. SDカードにSCRIPT.TXTという名前でテキストファイルを作る。
  2. SCRIPT.TXTに測定したい条件を記述する(下記参照)
  3. 天秤の設定パラメーターはこんな感じ(ボーレート:9600bps、ハンドシェイク:無し、ストップビット:1、データ長:8ビット、パリティ:無し、End of line:LF)
  4. SDロガー3のディップスイッチを3と4のみONにする
  5. SDロガー3とPCをRS232Cケーブル(クロス※1)で接続し、専用ソフトをダウンロードの上、時刻合わせを行う(私の環境では、専用ソフト上で認識されたポートは5でした)
  6. 天秤とロガーをRS232Cケーブル(ストレート※2)で接続し、先程のSDカードをセットしてスイッチON(以上)

※1 RS232Cが接続できないPCが現在は殆どだと思うので、USB変換アダプターを使用します。ただし変換アダプターはストレート結線扱いなので、別途クロスケーブル(メスーメス)を必要とします。ちなみに大して高くはありません。

USB-RS232C変換アダプター を見てみる

クロスケーブル(メスーメス) RS-232C を見てみる

※2 メトラー・トレドの製品の場合、RS232C接続口が”メス”タイプになってました。一方で、SDロガーの接続口は”オス”タイプになってますので、単純に考えるとRS232C延長ケーブルを買えばいいじゃん、と思うのですが、罠があります。

延長ケーブルだと、固定用のネジが邪魔して挿すことができません!(製品にもよるとは思いますが)ですので、ストレートケーブル(メスーメス)と合わせて、ジェンダーチェンジャーも合わせて買う必要があります。ちなみにこちらも大して高くはありません。

ストレートケーブル(メスーメス) RS-232C を見てみる

ジェンダーチェンジャー RS-232C を見てみる

なお、天秤のパラメーターは熟考したわけではないです、すんません。ただ、私の環境では接続できてます。

最後に、SCRIPT.TXTの内容は下記の通り(300秒間隔インターバル測定を永遠と繰り返す。測定の日付と時刻も同時に記録する)。細かいところは、メーカーに問い合わせると答えてくれるようですよ。。

  • ;1行ごとに、日付時刻を付加するスクリプトです。
  • ;END分まで繰り返す
  • #LOOP EVER
  • ;測定依頼コマンドを送信します
  • /S
  • :0A
  • ;「20YY/MM/DD, hh:mm:ss」の書式で、日付時刻を保存データに付加します。
  • #LOG 20@Y/@M/@D, @h:@m:@s
  • #WAIT TIME 300S
  • ;ここまでを繰り返します
  • #END

上記の:0Aの意味ですが、送信と受信のタイミングのせいか、なぜか時刻と天秤データが一行ずれてしまうことがあって<LF>を消すために入れたような・・・、ちょっと記憶が定かではありません。不要だったら抜いてください。ちなみに下記のようなデータが保存されます。Excelに貼り付けて、データ→区切り位置で適当にセルに分割すればOKです。

2016/05/25, 11:03:33 S S     105.38 g
2016/05/25, 11:08:33 S S     105.37 g
2016/05/25, 11:13:33 S S     105.36 g
2016/05/25, 11:18:33 S S     105.35 g
2016/05/25, 11:23:33 S S     105.34 g

なお、プリンタとの同時接続については、こちらはすみません、試したことありません。多分メーカーさんも答えてくれないのでは??どんな分岐ケーブルを使えばうまくいくか?両側全結線になるのでしょうか、それともスクリプトを使用する時としない時でケーブルを使い分けるしかないのか。。悩ましいですね、知っている人いたら教えてくださいな。


最後に

なかなか純正品を買うと高い世界ですが、うまくサードパーティーとか互換品とかを使って安く仕上げたいですね、もちろんきちんとしたデータをとることが最優先ですので、信頼性も大事ですが、上記品を使っていて今のところトラブルは皆無です。

メトラー・トレドの製品を例に書きましたが、天秤によってはRS232Cが9ピンでなく25ピンだったりもするので、まずは説明書等でご確認くださいませ。

それから、こういったExcel上のデータを使ってプレゼンをよりわかりやすく、かつ注目度が高まるようにできるようなグラフ用ツールを作りました、ぜひご覧くださいませー

プレゼンに便利!Excelで動くグラフ(モーショングラフ)を作る方法
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